芸術鑑賞会 上演作品のご紹介「間違いの喜劇」
【「間違いの喜劇」と白いボール】
出口典雄(シェイクスピアシアター主宰・演出家)
『間違いの喜劇』では白いボールがいつも舞台にあります。それがぼくの演出のキー・ポイントになっております。バスケットボールを白く塗ったものですが、それがさまざまに動いて、さまざまなイメージをつくっていきます。喜劇は混乱に始まって秩序の回復に終わる芝居です。一般にそういう構造を持っております。平和が訪れ、調和に満ち、幸福がいっぱいに広がっていきます。平和も、調和も、幸福も、秩序も、三角ではなく四角でもなく、どう考えても丸いもの、円であり、球です。そういうわけで、幕が開くと舞台の中央に白いボールがあることになります。召使の持っている白いボールはおカネになります。主人と召使が「時」について問答をしますが、当時「時」はハゲ頭のオジサンだと考えられていましたから、白いボールは「時」のハゲ頭になることになります。召使が丸々と太った女に追いかけられます。召使はこの女を地球にたとえます。すると白いボールは地球になります。街の人たちに追いかけられた二人は修道院に逃げ込みます。召使が白いボールを地面に叩きつけます。するとそれは鍵のかかった門になります。そして最後にはその白いボールは舞台に置かれて、われわれが求めている調和、永遠の願いである調和の象徴となります。登場人物たちは取り違えの喜劇を演じ、混乱し、最後にはこの調和へ、この白いボールへたどり着くということになるのだと思います。
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