シアターの演技の基本


 創立時のシェイクスピアシアターの演技の中心的な課題は、スピーディーな台詞と素早い動作、 急激な感情の変化にありました。つまり速度と変化です。 特にそれは喜劇においてはっきりと見られる特長だったと思います。 それはいまも少しも変わってはいません。 その上に、それをあくまでも保持しながら、現在では次のようなことも考えています。
 シェイクスピア作品の演技の最も根本にあるのは
 ①腹から声を出すこと。腹の底の底から声を出すこと。
 ②その腹の底からの声でシェイクスピアの言葉を、つまりは訳者小田島雄志の言葉の流れ、文脈を出来るだけシンプルにたどることです。
 以上の二点につきます。
 つまり、簡単に言ってしまえば、
  ①いい声
  ②文脈をたどる
  ③どうでもいいけれど “気持ち”
です。いい声を出すのは至難の技です。シェイクスピアの文脈をたどるとなるとさらに至難の技です。 たいていの演技者は “気持ち”というあいまいなものによって腹の底からの声を修練することを怠り、 シェイクスピアの息の長い文脈を不明瞭なものにしてしまいます。
 従って“気持ち”などはどうでもいいのです。
しかし“気持ち”のない文脈はありません。言葉はありません。人間はいません。 なによりも “気持ち”は必要です。大切です。そのことをよく考えたうえで、なおやはり、
 ①いい声
 ②文脈をたどる
 ③どうでもいいけれど “気持ち”
なのです。この矛盾したかのように見える主張にこそシェイクスピア演技の根本があると考えます。 これらの点はとても簡単なことです。 簡単なことですがこの点を守っているシェイクスピア上演はほとんどありません。そう思います。 この点をシェイクスピアシアターはなんとしても守り抜きたいと思います。
 微力ですが・・・。

シェイクスピアシアター主宰 出口典雄
【演出家略歴】
 出口典雄(1940〜2020)
東京大学文学部美学科卒
文学座、劇団四季を経て
1975年 シェイクスピアシアターを旗揚げ。
1978年 紀伊国屋演劇賞演出部門受賞。
1981年 シェイクスピア全37作品の演出を達成。一人の演出家による全作品演出は世界初。

シェイクスピアシアター

演出家亡き後も、日本のシェイクスピアの語り方を求め継続中。 1975年旗揚げ、81年にシェイクスピア全37作品の演出 そして上演達成(世界初)。 今後の上演には焦らず、慎重に。2022年より新体制で活動中。 YouTubeに出口典雄の講義を残してます。 次回公演は2025年2月1日(土)、2日(日)「ハムレット(1時間版)」! お問合せは→ info.shksprthr45@gmail.com

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